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侍ジャパンは素晴らしかった。それでも敗因を語るのを避けてはならない

準決勝敗退に終わった侍ジャパン。世界一に足りなかったものとは

コーチ陣の厳選、スコアラーの強化を

 アメリカ戦で浮き彫りとなった弱点は、今後への教訓としなければならない。4年後の第5回大会はもちろん、19年のプレミア12、20年の東京五輪においても、今回の敗戦で得たものが試されるわけだ。

 外国人投手の「動くボール」に慣れるためには、日米野球やメジャーリーガーが多く在籍している国との強化試合を増やすことが得策ではあるが、日程的な問題が足かせになる。ならば、データを駆使し、事前に相手を丸裸にすればいい。

 今回のWBCでは、15年のプレミア12から専属スコアラーを務める志田宗大が侍ジャパンの〝頭脳〟を一手に引き受けたが、NPBの各球団のように「データ班」を結成してもいいのではないだろうか。メジャーリーグはもちろん、韓国、台湾、メキシコ……各国のリーグにスコアラーを派遣する。その国に常駐し、カウントや打者別の球種やコースの割合はもちろん、球場など条件別の成績……詳細なデータを集められるだけ集める。日の丸という看板を掲げる以上、その程度の労力を惜しんでいては、世界一は遠のくばかりだ。

 そして、裏方同様、侍ジャパンの組閣にも力を注ぐべきである。

 首脳陣と言えば、どうしても監督人事ばかり取りざたされるが、監督とはあくまでも全体のかじ取りが役割の本分であり、戦術や選手への細かい指示はコーチが担う。今回で言えば、前回大会が終了してから小久保裕紀が監督の責務を全うしたが、コーチ陣は一定ではなかった。4年の間にNPB球団のコーチに呼ばれる可能性など様々な事情があるのだろうが、侍ジャパンの関係者は「それでチームの方向性が固まるとは思えない」と警鐘を鳴らしていたものである。

 世界と対等に戦い勝利する。その目的が明確であるのなら、メジャー経験者や海外の野球に精通しているOBを専任コーチとして据えるのもありだ。彼らは皆「メジャーでの経験を日本の野球に生かしたい」と、高い志を持っている。日本人メジャーリーガーが辿ってきた道は、日本野球の財産である。それまで指導者としての経験がなかったとしても、4年間、専属として手腕を振るうことで侍ジャパンは一枚岩となる。

 WBCを制したアメリカや前回優勝のドミニカがそうであるように、一流メジャーリーガーが当たり前のように出場するほどWBCのレベルは上がってきている。もはや、監督や選手だけで勝てる大会ではない。だからこそ、多角的に侍ジャパンのあり方を検証し、強固なチーム作りに邁進すべきである。

 日の丸を背負う。世界一奪還。その気概を組織のキャッチフレーズだけで終わらせてはいけない。

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田口 元義

たぐち げんき

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。現在は福島県・聖光学院野球部に注目、取材を続ける。


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